「ヒスタミン」という言葉をご存知でしょうか?
皮膚科は『痒い』と訴える方を診ることが多い診療科です。
痒みは主に「ヒスタミン」が原因となります。その痒みを抑えるために「抗ヒスタミン剤」を処方することが日常です。
(副作用は主として眠気と喉の渇きです。)

週刊朝日(H31.1.25)の脳研究者 池谷裕二先生のコラムで、ヒスタミンの放出を促す薬を飲むと記憶力が増す、という記事がありました。
普通は、一度見た物は誰でも数日すれば忘れてしまいますが、マウスにそれを飲ませてみると、一度見た物を1ヶ月後にも鮮明に思い出せるとのことで、ヒトでもその効果が確かめられたそうです。

とすると、「ヒスタミン」を抑える薬を処方している私は、患者さんの記憶を無くさせているのか?とも思いました。
いえいえ、安心してください。
よく読むと、マウスが飲んだのは、「ヒスタミンH3受容体逆作動薬」というもので、皮膚科で処方するのは「ヒスタミンH1受容体阻害剤」ですので、タイプが違います。
(参考までに、胃酸を抑えるのに使われる薬は「ヒスタミンH2受容体阻害剤です。)

自身で、H3受容体逆作動薬を使いたいか?と問われれば、とりあえず試したいと思います。記憶力抜群になれば、クイズ番組楽勝だし、顔をみて名前を思い出せない失礼なこともなくなるはずです。
でも、忘れたいことを忘れなくなるのは果たして?とも思うわけです。
時間が解決するということもありますしね。いつまでも恥ずかしいことや失敗を引きずるのも嫌ですし…

現時点ではこの薬、あらゆる記憶に効くのかは不明で、今後の検証が必要とのことです。