千葉市医師会便り(R3.11月号)に掲載予定の原稿の一部をこちらに先行アップします。
テーマは「フケ症」についてです。ご参考になれば、と思います。

 フケは、約1ヶ月で寿命をおえた表皮の細胞が剥がれ落ちたもので生理的なものです。
そのフケが増量し、目立ち、痒みを伴い、掻くことで悪循環となり、フケ症ということになります。頭皮のフケ・痒みで、皮膚科を訪れる方の6割程度が、脂漏性皮膚炎と診断されます。
 頭皮、顔面、前胸部、肩甲骨の間、外陰部等は他の部位と比べ皮脂腺の多いところです。
それらの部位にできる皮膚炎が、脂漏性皮膚炎と言われます。
 個人差、性差(女性より男性)、年齢(思春期から30歳代)もありますが、皮脂の分泌が盛んになり、毛包にたまり、皮脂中のトリグリセライドが、表皮の常在菌の出す酵素で分解されてできた遊離脂肪酸、整髪料等の化学物質、常在真菌のマラセチア・フルフルの菌体等で、刺激され、表皮細胞の剥がれ落ちる周期がはやくなり、フケの量が増える。という過程でおこるものと考えます。
 AIDS患者さんで、脂漏性皮膚炎がみられるのは、マラセチアが免疫低下で増えるためなのでしょう。表皮細胞のターンオーバーがはやまるのが乾癬の病態なので、皮疹も似るので鑑別診断になりうるのかなぁとも思います。
 マラセチア・フルフル(M.furfur)は、湿気と脂を好む誰にでもいる常在菌です。
病的に増加すると、癜風やマラセチア毛包炎といった皮膚疾患になりますが、フケ症の方の頭皮には正常の方より多く存在しています。

 治療は、とりあえずは、炎症・自覚症状の程度に応じた、ベリーストロング(アンテベートローション、ネリゾナソリューション、トプシムローション等)や、ストロングクラス(リンデロンVローション、エクラーローション等)のステロイド外用剤を2回/日塗布することや、適応拡大となったステロイド含有シャンプー(コムクロシャンプー)を使用することで1週間もしないうちに改善しますが、中止すると再発します。
 補助的に、ビタミンB2(フラビタン等)やB6(ピドキサール等)の内服も効果的です。
もちろんビタミンB群を含む食物(トマト、豚肉、卵、牛乳等)を加えた脂肪分の少ないバランスの良い食生活の方がなお良いと思います。
 また、皮脂分泌はアンドロゲンに左右されるので、ストレスを減らすことで、自律神経系を介したホルモン分泌コントロールも重要でしょう。(言うのは簡単ですが..)
 ステロイド外用剤でとりあえずの改善がみられた後、マラセチア・フルフル対策をすることで悪化を防ぐことが可能です。
 
 そこで、抗真菌剤の外用が次の一手です。ケトコナゾール(ニゾラールローション)の1〜2回/日の継続使用です。
 市販のフケ用シャンプーとしては、ジンクピリチオン、二流化セレン、オクトピロックス、硝酸ミコナゾールがそれぞれ配合されたものを入手できます。ミコナゾール配合の商品は、持田製薬から、コラージュフルフルという商品名で出ています。
 
 最後に裏技です。市販のコラージュフルフルはシャンプー、リンス、ボディソープと種々ラインナップされていますが、それなりの価格のため、自宅で使用中のシャンプー100mlにつき、ニゾラールローション10mlを混合すると、なんちゃってコラージュとなり、提案すると喜ばれます。
 
 
 
 コロナ禍にあって様々なストレスを抱えている方々が多いと思いますが、早く過去のことになってくれることを待ち望みます。