皮膚感染症

真菌感染症(足白癬、爪白癬、股部白癬、カンジダ感染症、癜風)

真菌とはいわゆるカビのことです。“足白癬”は、Trichophytonというカビが足の皮膚に感染した状態で、俗称ミズムシとよばれます。英語圏での俗称はAthlete’s foot(競技者の足)といわれます。
このカビが股に感染すると“股部白癬(インキン)”、体部だと“体部白癬(タムシ)”と呼ばれます。カビの感染部位の違いで本質は変わりません。
診断は、疑わしい皮膚を少しとり、直接顕微鏡検査をすることで確定します。
カビも色々いるわけで、“カンジダ感染症”では赤ちゃんのおむつ部位や、口腔、膣等にカンジダというカビが増殖することでおきます。また、マラセチアというカビは、常在菌ですが皮脂の多い胸や背中で増えて“癜風”という病気をおこすこともあります。いずれもその部位を取らせていただき顕微鏡検査や真菌培養することで診断できます。いずれにせよ完治します。

治療

治療は、カビを殺す薬を1回/日塗ることで、治癒します。(足は症状が改善しても、1~2月塗り続ける必要があります。)また、“爪白癬(爪ミズムシ)”になると、内服薬が必要となります。内服できない方(妊娠中、肝機能障害がある等)は外用薬もあります。
真菌感染症は、完治します。

ヘルペスウイルス感染症(単純ヘルペス、帯状疱疹)

“単純ヘルペス”は、1型と2型に分類されます。
1型は上半身、2型は下半身に多いのですが、皮膚や粘膜、神経に親和性があり、神経節細胞に潜伏します。初感染の多くは症状が出ない不顕性感染です。再発時は、皮膚と粘膜の境(口唇、眼の周り、鼻等)に発熱、疲労、ストレス等により、外陰部では、性交、月経等がきっかけで症状が現れます。繰り返す方は、出そうだなという予感がするようです。
“帯状疱疹”は、経気道感染した水ぼうそうウイルスによるものです。水ぼうそうにかかると脳や脊髄後根神経節にそのウイルスが住み込んでしまいます。そして、何らかのきっかけでウイルスが目を覚ますと帯状疱疹として、皮膚の神経の流れに沿って痛みを伴う水疱ができます。単純ヘルペスとは異なり何度もなることはありませんが、人によっては、後遺症で神経痛が年余にわたり続くことがありつらい病気です。

治療

単純ヘルペスの症状が出たら、外用、内服、点滴の抗ウイルス剤がありますが、私は、内服薬のすみやかな使用をお勧めします。また、タオルの共用等は感染拡大を防ぐためにやめましょう。
帯状疱疹の治療は早めの抗ウイルス剤内服です。また、50歳を過ぎた方は、ワクチンを接種することで、発症予防や症状の軽減を図ることもできますのでご検討ください。

いぼ

“いぼ”は乳頭腫ウイルスというウイルス感染症です。ヒトからヒトの直接感染、あるいは器具を介しての間接感染で、潜伏期間は一定していませんが、平均3カ月程度と考えられています。自然治癒が25%程度ありますが、大きさや数が増えることが多いです。

治療

治療は、外陰部のイボ“尖圭コンジローマ”には外用薬もありますが、一般的には数回かけて、液体窒素(-196℃)を患部に押しあて冷凍凝固処置を行います。痛いため、嫌がる方も多いと思います。ハト麦エキス内服、VitD3軟膏での密閉療法等も選択肢です。

伝染性軟属腫(みずいぼ)

“伝染性軟属腫(みずいぼ)”はpoxvirusというヒトのみに感染するウイルス感染症です。別の見方でいえば、乾燥性皮膚の方の合併症といえると思います。プールのビート板で皮膚がこすれたり、兄弟でタオルの共有等で感染します。ニキビができる年齢以降の方はめったにかかりません。

治療

治療薬はありません。自然消退を待つか、採るかの選択です。自然消退は数カ月から2~3年といわれています。採る選択をされたときは、局所麻酔剤のテープをあらかじめ貼付して来ていただきますのでそれほど痛くないかと思っております。

伝染性膿痂疹(とびひ)

“伝染性膿痂疹(とびひ)”は乳幼児に多い細菌感染症です。ほとんどが黄色ブドウ球菌によるものです。少数ですが、A群溶連菌感染や、それらの混合感染もあります。

治療

治療は、適正な抗生剤内服と、シャワー等で患部を洗浄したうえで抗菌剤の外用を行います。また、皮膚炎を伴うこともしばしばで、消炎外用薬も追加することがあります。適正な抗生剤の選択のため皮膚の膿を取り細菌培養検査を行うこともいたします。また、幼稚園、保育園等は患部を覆って通園できます。

性行為感染症(梅毒等)

従来は、梅毒、軟性下疳、淋病、鼠経リンパ肉芽腫症を指していましたが、近年は、HIV感染症、クラミジア感染症、性器ヘルペス、尖圭コンジローマ、陰部伝染性軟属腫、性器カンジダ、毛じらみ、ウイルス性肝炎等を広く性行為感染症と解釈することもあります。
治療薬がある病気もありますが、一度かかると難治性のものもあります。

治療

“梅毒”であれば、ペニシリン内服8~12週で治癒しますが、感染後一定期間は血液反応では陽性と出ません。また、治癒しても、血液検査をすれば、抗体は陽性と出てしまいます。(それを血清学的瘢痕といいます。)心の傷になりますね、予防が大事です。